2016年10月30日

宮沢賢治生誕120年を記念して  講演 と 影絵「銀河鉄道の夜」の上映会

去る8月27日、宮沢賢治生誕120年記念の催しを、図書館視聴覚ホールにて開催しました。賢治は1896年岩手県花巻市で生まれました。当日は賢治の誕生日に当たり、出生地の花巻を始めとして各地で生誕記念の行事が催されました。
講演:著書『宮沢賢治の心を読む』を語る 講師:河合雅雄氏
Still0830_00071.jpgこの本の著者名は、児童文学を書くときの私のペンネーム、草山万兎(くさやままと)を使っています。みんなに「変な名だなぁ」と言われます。私は男ばかりの6人兄弟ですが、
子どもの頃、雅雄(まさお)は「マト」、兄は仁(ただし)は「タント」、弟は迪雄(みちお)は「ミト」というふうに、それぞれ愛称で呼び合っていました。なぜ「ト」が付くのかわかりませんが、私は猿の研究の合間に兎の研究もしていて、私とは非常に親しい動物です。そんなことから万兎(まと)という名前をつけました。
宮沢賢治は本当に天才だと思います。不思議な人でもあり、ある意味で不遇でもありました。詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を自費出版しましたがほとんど売れませんでした。草野心平、谷川徹三など少数の人は才能を認めていましたが、注目されず、肺結核で37歳で亡くなりました。戦後1950年くらいから作品が評価され始め、学校の教科書にも掲載されました。皆さんがよく知っている「雨ニモマケズ」は、亡くなってから賢治のトランクの中から偶然見つかった手帳に書かれていたものです。東北地方の地震と津波で大変な被害を被った子どもたちがこの詩を精神的なよりどころにしたと聞いています。
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宮沢賢治、わたしは「賢治さん」と呼んでいます。賢治さんと言っても違和感がない。不思議な人だなぁと思います。宮沢賢治には他の作家にはない「宮沢賢治学会」(花巻市)という学会があります。その宮沢賢治学会から『宮沢賢治の心を読むT〜V』(童話屋)の挿絵を担当した篠山市在住の銅版画家で加藤昌男さんが、第26回宮沢賢治賞奨励賞を受賞されました。宮沢賢治賞は優れた賢治研究や実践的な活動に贈られるものです。おめでとうございます。
宮沢賢治はどうしてこんなに人を魅了するのでしょうか。やはり文章そのものが優れています。それと言葉の使い方が非常に上手い。賢治はオノマトペ(擬音語・擬態語)を、とてもよく使います。これが頭に残るんです。『風の又三郎』で、大風が吹くとどっどど どどうど どどうど どどう≠ニ表現している。それから『月夜のでんしんばしら』で一万五千本のでんしんばしらが夜中に急に歩き出すと、歩く表現がドッテテドッテテ、ドッテテド=Bそう言う表現をする。すごい言い方だなと思います。非常に適切な言葉を拾い上げる天才だったと思います。何かわからないけど心に降りてくる。
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賢治童話にはいろんな動物が出てきます。だいたい158種類。こういう動物を調べていて非常に不思議に思ったのは、カモシカ、オコジョが見当たらないこと。カモシカは高い山にいます。賢治さんは岩手山が好きで40回以上も登っているので、カモシカを見ていないはずがありません。ライチョウ、イワヒバリといった鳥や、魚のイワナ、ヤマメも一語も出てこない。奥山にいる動物は出てこないのです。賢治さんの扱っているのは里と里山の動物、それと馬とか牛の家畜です。どうして奥山の動物は出ないのでしょう。「人間が死ぬと霊魂が全部奥山に還っていく。奥山の動物は霊力を持っている崇める対象だ」と、賢治さんは考えたのではないでしょうか。賢治作品に奥山の動物はいない、というのはひとつの発見でした。
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私は動物学者で、生態学が専門です。生態学の立場から『どんぐりと山猫』のどんぐり裁判について考えてみましょう。
あるとき一郎と言う少年におかしなはがきが来て、どんぐりたちが、誰が一番偉いか裁判をするからきてくれ、とありました。どんぐりたちがいっぱい集まって「頭のとんがっているのがいちばんえらい」とか「まるいのがいちばんえらい」とか口々にいっています。一郎が判決を下します。「そんならこう言いわたしたらいいでしょう。このなかでいちばんばかで、めちゃくちゃで、まるでなっていないようなのがいちばんえらいとね。お説教できいたんです。」裁判長の山猫はなるほどとうなずいて、どんぐりに言い渡します。「よろしい。申しわたしだ。このなかでいちばんえらくなくて、ばかで、めちゃくちゃで、てんでなっていなくて、あたまのつぶれたようなやつがいちばんえらいのだ」。
どんぐりは、しいんとして堅くなってしまいました。そういう裁判です。
実はどんぐりという植物はありません。どんぐりというのはコナラ属(コナラ、カシワ、クヌギ、アラカシなどのカシ類)、マテバシイ属、シイ属など、ブナ科の植物の果実の総称で、樹種によってその大きさや形が全部違うのです。
「とんがったのもある、まるいのもある。それぞれが個性を持ち、大きくなったらカシになりクヌギになり雑木林を作るわけだから、みんなが偉いんだ。特に偉いやつはいないんだ」一郎が言っているのはそうい一郎が言っているのはそういう意味なのです。そして裁判長の山猫が「頭のつぶれたやつが一番偉いんだ」という言葉を付け足しています。雑木林というのはいろんな木がごちゃごちゃ生えていて雑木林を作っています。雑木は炭にもなりいろんなことに役立ちます。雑木林は杉林や檜林のような一斉林のように緑の天上がとんがらず、平らです。このことを、山猫裁判長が「頭のつぶれたやつが一番偉いんだ」と付け足したのではないでしょうか。

posted by ささやま図書館友の会 at 10:13| Comment(0) | 活動報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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